エチェベリア国の大都市、ヴァレロンの一角にちょこんと存在する薬草店【ノート】。
その店主であるフェイル=ノートは、薬草店を営む一方で、元弓兵としての能力を
活かし、「依頼人の指定する標的を殺さずに行動不能にする」と言う
裏稼業を行っていた。
そんな最中、薬草店【ノート】のあるレカルテ商店街に『勇者一行』が訪れる
と言う噂が流れ、商店街はにわかに色めき立つ。
勇者とは、一般市民が手に出来る最高の称号。それを持つ者は同時に市民に
羨望の眼差しで見つめられ、その勇者が立ち寄った店、買い求めた品はその後
爆発的な人気を博すからだ。
そして、フェイルも一念発起し、薬草店【ノート】の目玉とすべく
特注の食虫植物を仕入れるが、よく遊びに来てくれる近所の少女ノノをはじめ、
殆どの常連客に恐れ戦かれてしまい、【ノート】は経営を始めて以降最大の危機に瀕す。
更に、傾きかけた薬草店に追い討ちをかけるように、フラッと現れた客が
店の展示商品を道連れに大転倒。致命的な損失を被る。
しかし、そのコケた客こそ、巷で大騒ぎになっている勇者だった。
尤も、話を聞いてみると、その勇者は候補と言う立場であって、まだ勇者の称号を
得るための活動中とのこと。現在は、隣国のデ・ラ・ペーニャに親書を届ける
旅の途中だと言う。
フェイルは弁償を要求するが、現在勇者一行は無一文。
様々な思惑と交渉の結果、勇者一行は騒ぎにならないよう身分を隠しつつ、
薬草店【ノート】で働く事で損害分を返済する事になった。
元凶となった勇者候補リオグランテ・ラ・デル・レイ・フライブール・クストディオ・
パパドプーロス・ディ・コンスタンティン=レイネル。
ことある毎に【ノート】を悪し様に言う女性剣士フランベルジュ=ルーメイア。
丁寧な口調で奸智と現実を叩きつけてくる魔術士ファルシオン=レブロフ。
そんな面々が店の従業員として機能する筈もなく、フェイルの精神と経営状況は
更に悪化。裏の仕事も一時休業となってしまい、本気で追い詰められていく。
「αμαρτια」は、そんな不幸な薬草士の懸命に生きる姿を描いた物語です。
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