人間は、絶対に手に入れなければならない何かの為に生きている。
例えば『栄光』。
例えば『安寧』。
この世に生を受け、そして何十年もの間命を燃やし続ける理由は、生きていく中で見つかる各々の到達点だ。
人間の力は決して雄大ではない。
特に心は、簡単に折れてしまう。
高等感情が存在する分、他の生物よりも弱いかもしれない。
それでも人間が長らく生き続けられるのは、種の保存という生物共通の到達点以外に目的があるからだ。
目的は欲望と言い換えてもいいだろう。
人間は欲望を抱くことで、他の種とは独立した人生設計を作る。
――――上手くいった。
金色に輝く髪を風に揺らし、男はそうほくそ笑んだ。
野望は人間を輝かせる。
欲望は人間を強くさせる。
だが同時に、数多の障害を作ることも避けられない。
男にとっての障害は、似た目的を持つ他の人々。
そして――――自分自身。
いずれも厄介な存在だ。
だが、障害は乗り越える事が出来る。
その為に必要なのは、叡智と武力。
叡智は"情報"と"処理能力"と置き換えても良い。
「クク……」
そして情報を入手した今、目的に一つ近づいた。
切れ長の目を更に細くし、男は笑う。
欲望にその身を委ね、業を魂で焼き尽くし、ひたすらに笑う。
「ハハハハハハハハハ!」
その手にある、呪いの権化――――22の遺産で宙を切り裂き、男は自身の欲望を極限まで満たしていた。
或いは――――欲望の自身を。
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