クワトロ=パラディーノ。
38歳という、戦士としてはやや絶頂期を過ぎた感のある年齢ながら、その戦い振りは一向に老いる気配がなく、現在もアクシス・ムンディにおける最高実力者の称号を堅守している。
そんな彼が現在使用している得物の名は、銀剣・雪月花。
市販されていない、素性も定かでない特殊な剣だ。
確かなのは、この剣がクワトロにとって極めて重要な存在である点。
というのも、クワトロが銀剣・雪月花を自身の手に収めたのは、彼がまだ剣士とはなっていない頃の話だからだ。
つまり、この剣がクワトロにとって最初の相棒であり、現在の相棒でもある。
クワトロの出身地は、中立国家マニャンとなっている。
プロフィール上では。
実際には、マニャンで彼が生まれた事実はない。
ただ、もうすぐ40を迎えようとしているクワトロは、然程故郷を欲してはいなかった。
人間は年齢を重ねると故郷に身を落ち着けたくなる――――そんな風潮がある。
事実、そう感じる壮年期の世代は決して少なくはないだろう。
けれど、多いとも言えない。
自分の根っこを見つめて、根ざす場所はやはり生まれた大地だと思う事が正しいのだろうと思ってはいても、実際にそうすべきかどうかは別問題。
少なくとも、クワトロは自身の生誕した場所へ固執する気はなかった。
では一体、何処に腰を下ろすべきか。
何処に根を張るべきか。
何を糧とすべきなのか。
クワトロは既に、その答えを出していた。
「もしかして、お仕事探していらっしゃいますかおしー?」
きっかけは、とある人物との出会い。
妙な言葉遣いの風変わりな女の子だった。
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