
■Prologue |
この世界には、恋愛が満ち溢れている。
小説を読めば、そこには恋愛が描かれている。
楽曲を耳にすれば、そこには恋愛の歌詞が紡がれている。
映画を眺めれば、そこには恋愛の過程が丹念に綴られている。
何より、そこら中で恋だの愛だのという議論が交わされている。
人は言う。
恋愛は崇高なもの。
人は言う。
恋愛は堕落。
人は言う。
恋愛は――――
その場にいなくても、人は恋愛をテーマに自己を主張し、
そして会話をしている。
日本で一年の間に結婚するカップルの数は、66万組。
全てが恋愛の末の結婚じゃないかもしれない。
けれど、結婚しなくても、恋愛をしている人達は星の数ほどいる。
つまり。
恋愛は、車の教習や大学受験と同じように、多くの人が経験するもの。
誰もが一度は興味を持ち、そして自分なりの答えを見つけていく。
ならば、恋を一度も経験した事なく成長した人間は、落伍者なのか?
恋について知らない人間は、無知の極地なのか?
言うなれば、そんなお話です。
■本編 |
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