世の中には、死んで惜しまれる人間と、死んでも惜しまれない人間の二種類しかいない。
そんな中で、俺は圧倒的に後者であると言う事を自覚していた。
ただ、その答えがわかるのは、60年後くらいかな、と予見していた。
平均寿命くらいは生きて、凡庸な生活の中で、ガンあたりの病気でひっそりと……って、そんな感じで。
でも、まあ、世の中思い通りに行かないことなんて腐るほどある訳で。
現実はと言うと、俺は19歳の身空で、今まさにこの世を旅立とうとしている。
多分。
車に正面から跳ねられりゃ、な。
意識が残ってるのが不思議なくらいだ。
驚いた事に、痛みはない。
って言うか、恐らく感じてない。
目も、開けてる筈なのに見えん。
白いのか、黒いのか。
それさえわからないのは、脳ミソがなくなってるからか?
ただ、ほんの一瞬、赤い光が見えた気がした。
救急車のパトライトかもしれない。
って言うか、間違いなくそうだろう。
俺を跳ねたのは、その救急車だしな。
でも、その赤も直ぐに見えなくなった。
音が鳴ってる。
サイレンじゃないし、声でもない。
雨音。
雨が降ってた訳じゃないのに。
ザー、っと。
その音だけが聞こえる。
そろそろ、かな。
果たして俺は、どっちの人間なのか。
もう考える力は残ってない。
でも、まあ、別に良いか。
答えを知る事も出来ないし。
知ったところで、きっと胸糞悪いだけだ。
そう言う答えなんだろうと、霞のような意識を無理矢理手繰り寄せて思った最後の思考が、俺の誰にも知られる事のない、辞世の句だった。
■本編 |
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