
■Prologue |
そこには、朽ち果てた一つの"何か"がひっそりと浮かんでいた。
可哀想に、独りぼっちでどうしたんだい?
そう問いかけてみたとしよう。
答えは返ってこない。
声は聞こえる。
けれどもそれは、質問に対する応答とは言えないものだった。
例えその"何か"が過去に何であったとしても、ここにあるのは今。
崇高な意思であろうと。
立派な志であろうと。
重い歴史の積み重ねであったとしても。
今だけが、寂しく佇んでいる。
幸か不幸か。
彼女はそれを、黙って見ているような人間ではなかった。
■本編 |
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